冬場の介護の注意点 ~寒さと乾燥というキーワードから押さえておきたい注意点
このような冬の時期の介護は、「寒さ対策」と「乾燥がもたらす問題への対応」という2つの視点で考えていくと良いのではないでしょうか。
(1) 衣服の問題
「図-冬場の衣服面での介護ケアのポイント」

① より暖かさを重視しつつ、体の動かしやすさにも注目する
人は加齢に伴い体温調節機能が低下すると言われています。つまり、寒さ対策としての衣服の選択が非常に大切になるということです。
しかし「寒いのだから厚着をすればよい」とは言えません。厚着をすると、その分の服の厚みで体をうまく動かせなくなり、転倒などを含む事故につながる可能性があるからです。
また認知症が進むなどしている場合、夏着と冬着の違いを認識する能力が十分発揮できない可能性も考えられますし、屋内にいるときと屋外に出るときとでは、当然同じ衣服でよいというわけにはいかないでしょう。
その方の身体の状況、室温や気温、動きやすさなどを考慮しつつ、また、その機能性にも着目した衣服選びとその支援が重要になるということです。
なお、今では誰もが利用するようになったとも言える機能性衣料などは、一定程度以上利用すると防寒効果が薄れる場合もあるとされていますので、何年も着ているようなものには注意が必要な面もあります。
② 一人でできる=脱ぎ着のしやすさ、着心地
介護にあたっては、その方の持てる能力を最大限発揮できるよう支援することが重要。これは着替えについてもあてはまることです。麻痺などの障害がない場合でも、高齢の方にとって衣服の脱ぎ着は大変な面があります。
そのひとつの理由に、体の柔軟性の低下などがあります。
よって、あらかじめ前開きの衣服など、脱ぎ着のしやすいものを利用する方がよいとは考えられますが、すべて前開きの衣服というわけにはいかない場合もあるでしょうし、ご本人のお気に入りが頭からかぶるタイプのものである場合もあるでしょう。
そのような場合には、タグの部分などに名前を書くなど、前後がわかりやすくする工夫も必要かもしれません。また前開きの衣服でも、小さなボタンなど、とめるのが難しい場合も。大きなボタンのものを選択したり、付け替えたりといった工夫も大切です。
また、ファスナーもうまく利用できないケースもあるので、マジックテープ等を利用することも検討したいポイントです。
機能性という視点で言えば、ご本人にとっての着心地も重要。いくら脱ぎ着がしやすいものでも、ご本人の着心地が悪い物でないことは、最低限押さえておきたいことと言えます。
③ 重ね着に見られる高齢の方の心配
認知症の方を含む高齢の方が何枚も重ね着し、注意を促しても脱がないというケースは比較的多く見られるものです。
一つの理由として、衣服の脱ぎ着の仕方がわからなくなっていたり、寒暖の判断がうまくできなかったりといったことが考えられますが、他にも「冷えて風邪をひくかもしれない」など、心配や用心深さが理由になっている場合もあります。
このように「言っても聞かない」というケースでは、注意を促す方への信用・信頼が必ずしも十分でないケースも考えられますので、日頃からご本人が安心するような関係づくりが重要になると言えるでしょう。
④ 同じ服ばかりを着ているようなら、衛生面への配慮を
同じ服ばかりを着て、着替えを促しても他の服を着ないケースも多いようです。一つには、「いつもと同じであること」が、認知症を患う方を含む高齢の方に安心感を与えている面もあると考えられます。
とはいえ、本当の意味で「いつもと同じ」では、衛生面に問題があります。
この場合、同じ服を複数枚用意するなどすれば、自ら着替えをされる場合もあるようです。同じ服ばかり着る理由としては、ご本人のお気に入り、という場合もあるでしょう。
逆に考えれば、「ご本人が気に入るようなものが複数あれば」、自ら着替えをされる可能性も高まるということ。
機能性の部分だけではなく、「ご本人にとって」という視点に立ち、ご本人の趣味にあったものを選ぶことが、着替えに関する問題を解決しやすくなるとも考えられるのです。